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大阪家庭裁判所 昭和32年(家ロ)25号 審判

申立人 田口チヨ(仮名)

相手方 石田一夫(仮名)

主文

相手方は申立人に対し、別紙調停条項第二項の慰藉料債務残額金一三、〇〇〇円及び同条項第四項の(イ)下駄箱の引渡に代えて金二、〇〇〇円、以上合計金一五、〇〇〇円を昭和三二年六月より同年八月迄毎月五日限り金五、〇〇〇円宛分割して申立人宅に持参又は送金して支払うことを命ずる。

理由

本件申立理由の要旨は「相手方は昭和二八年二月一一日大阪家庭裁判所において申立人との間に同庁同年(家イ)第三七号離婚調停事件につき、別紙のとおりの調停が成立したに拘らず、主文記載のとおり慰藉料残金一三、〇〇〇円の支払及び下駄箱の引渡を怠つており、下駄箱の引渡に代えて金二、〇〇〇円の支払を約しつつ之亦支払はないので、相手方に対する履行命令を求める」というのである。

当庁調査官平知盛、黒川昭登の調査の結果を綜合すると、相手方は昭和三一年一〇月一九日より同年一二月一三日迄の間三回履行勧告のための呼出を受けながら出頭せず、同年一二月一九日調査官の出張勧告に対し上記金一三、〇〇〇円の残債務及び下駄箱の引渡に代えて金二、〇〇〇円の支払義務を認め自動車修理工具商が不振のため支払困難であるが、内金三、〇〇〇円は同年末迄に支払い、残額も新春早々完済する旨確約しながら全く履行せず、その後、二度に亘り書面による履行勧告及び二度に亘る呼出にも応じないことが認められる。

当裁判所は、相手方も生計困難であることを考慮に入れて、特に主文のとおり分割払を命ずるのであるから、万一相手方が誠意を示さないときは、不履行の都度過料の審判を受けるほか、前記調停調書に基く強制執行をも受けることも予期しなければならない。相手方において履行のため最善の努力をつくすことを切望する。

仍で家事審判法第二五条の二第一五条の三を適用し主文のとおり審判する。

(家事審判官 沢井種雄)

相手方は正当の事由がなく、この命令に従わないときは金五、〇〇〇円以下の過料に処せられる。

この命令は調停で定められた義務に何らの影響を及ぼすものではない。

(別紙)

調停条項

一、申立人と相手方とは本日調停離婚する。

二、相手方は申立人に対し金八万五千円を支払うこととし昭和二八年二月以降同年五月迄は金五千円宛、同年六月から一一月までは金一万円宛、同年一二月は五千円を毎月末日持参又は送金支払うこと。

三、相手方において前項分割金の支払を二回以上遅滞したときは、分割払の利益を失い残額一時に請求を受けても異議ないこと。

四、相手方は申立人に対し相手方宅に存在する申立人所有の

イ、下駄箱一個

ロ、水屋一本

ハ、火鉢一個

ニ、食卓一個

を昭和二八年二月末日限り相手方宅で引渡すこと。

五、当事者双方は前各項以外名義の如何を問わず何等の請求をしないこと。

六、本件調停費用は各自弁とする。

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